
年末が近くなると思い出す。
彼女と彼が初めて恋人同士となった日…。
彼女と彼の出会いは、とても偶然だった。
地方勤務の彼が7月に、東京の本社へ出張に来た時に、運命の出会いは始まっていた。
背が高くて、素敵な笑顔の真面目そうな男性。
彼女は思った。
「なんて素敵な人なんだろう…彼のような人が本社にもいたらいいのにな…」
そして、時は流れ…
彼は偶然にも、10月から地方から本社へ転勤になり、彼女の職場にやって来た。
わずか三ヶ月の後に、彼女と彼は再会した。
彼女の心には、今まで感じたことの無い、ある感情が芽生えた。
「私は彼と、生涯を共にするんだなぁ…」と。
色んな恋愛はしてきたけど、こんな感情は初めてだった。根拠はないけれど、不思議とある素直な心。感じる未来。
彼は、勿論彼女の名前など知るはずもない…
広い会社の中で、部署も違うし、関わりを持てるかさえわからない。
それでも、彼女の心には、
「彼は私を好きになる」
と不思議な確信した気持ちがあった。
そして一ヵ月半後…。
彼女は、ある飲み会に誘われた。
彼が来ることなど知っているはずもなかった。
彼も、慣れない仕事の山、挨拶回りで行くつもりもなかった。
でも…
またも偶然に、出かける彼女達の輪と遭遇し、彼は飲み会にやって来た。
飲み会で、彼の人柄に触れ、彼女は益々彼に惹かれた。
強く…強く。
まるで、見えない何かに引っ張られるように…。
そんな中、飲み会は進んで行った。
酔いが回ってきた頃…
周囲の先輩達からの、
「おまえら付き合っちゃえば?」
との冷やかしに、彼が答えた言葉は、
彼女に向かって手を差出し、
「僕と付き合ってください」
だった。
彼女は、その言葉に、
「酔いが回って言った言葉だけど…」
と、戸惑いながらも、
「私で良ければ…」
と答えた。
飲み会も終わり、解散となった帰り道。
彼は彼女に、「実は明後日は僕の誕生日なんです」と話しだした。
彼女は、冗談だけの言葉で終わったか…と少し残念に思っていた矢先だったので、突然の彼の言葉に驚いた。
誰が見ても、彼女がいてもおかしくないと思うような素敵な人。
彼女は、残念に思っている気持ちから思わず、
「彼女にお祝いしてもらう予定ですか?」
と聞いた。
すると、彼はびっくりした顔で、
「僕には彼女なんていませんよ。あなたはいらっしゃるんですか?」
と聞き返してきた。
彼女が
「私も彼氏はいません。」と答えると、彼は安心した顔をした。
何だろう?今の顔は??
益々彼女は彼に惹かれていった。
ドキドキと不思議な感覚に、フワフワとした気持ちで家路に向かった。
休みが明けて、彼女はある決心をした。
彼が誕生日だと言っていたから、おめでとうと伝えよう。そして、飲み会のお礼も一緒に伝えよう。
会社のメッセンジャーで、彼女は心臓の鼓動が高まりながらも、勇気を出して送った。
しばらくすると、彼からの返信。
「ありがとう。僕も楽しかったです。」
彼女は、「どうしよう。私、何やってるんだろう…」と半ば泣きそうだった。
緊張も重なり、そして続かない彼との会話…。
やっぱりあの飲み会での出来事は、社交辞令だったんだ…と、心に切なさが募った。
それから数日間、彼は仕事が多忙で、会社で顔を合わす機会も中々無かった。
彼女も落ち着きを取り戻し、いつもの生活に戻っていった。
彼女は、まだ気付いていなかった。
彼の本心に。
そして、運命の扉が開いたことに…。
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